タンス預金に対する相続税の考え方
タンス預金を含めた「手元現金」の範囲、相続税の基礎控除の考え方や配偶者の相続税額軽減措置、相続税の申告方法などについて詳しく解説します。
タンス預金も含めた相続税の計算は自己申告制に基づく
相続税の有無や納税額を計算する際には、被相続人名義の銀行預金や株式、不動産などの評価額ほかに、タンス預金を含めた手元現金の金額も正確に把握しなければなりません。被相続人が保有していたすべての財産の総額。それが相続税の計算の基礎となります。
ただし相続税の納税は、あくまでも自己申告制。そのため税務署は、被相続人の財産の有無や金額に関する客観的な証明書類の提出を相続人に求めるわけではありません。とりわけタンス預金等の手元現金については、銀行預金とは異なり、その有無や金額を第三者が客観的に証明できる性質のものではありません。
タンス預金等の手元現金も含めて相続税の計算をする際には、相続人が発見できた限りの手元現金を集計し、自己申告に基づいてその総額を申告する形となります。
相続税の対象となる「手元現金」の範囲とは?
相続対象となる銀行預金や証券会社の口座の評価額、不動産評価額などについては、第三者による証明により明確に把握できます。
一方で手元現金については、第三者がこれを正確に証明することは困難。相続人が発見した限りの手元現金を集計して申告するより他はありません。
では、ここにいう「手元現金」とは、どのような範囲のお金を指すのでしょうか?タンス預金のみを指して「手元現金」と言うのでしょうか?
以下、相続財産の対象として集計すべき手元現金の範囲を明確に理解しておきましょう。
タンス預金
自宅の金庫やタンスなどの中に保管している、いわゆるタンス預金は、原則として全てが相続財産となります。被相続人が経営者である場合、勤務先のデスクの中などに多少の現金が存在していることもあるので、相続人は確認する必要があります。
タンス預金について更に詳しく知りたい方は下記ページでまとめていますのでぜひご参考ください。
金融機関の貸金庫に預けていた現金
金融機関の貸金庫に預けている現金があれば、これも手元現金として相続財産に含みます。保管されている場所に限らず、被相続人が所有していた現金は全て相続財産に含まれると考えておきましょう。
財布の中にある現金
被相続人の財布の中にあったお金も、1円単位で相続財産となります。相続財産の評価額が膨大な場合、相続人の中には「財布の中の数千円程度は申告しなくても問題ないだろう」と考える方がいるかもしれませんが、被相続人に帰属した全ての財産は、金額の大小に関わらず相続財産に含まれると考えましょう。なお、相続税の申告書類を作成する際、被相続人の財布の中身まで1円単位で記載されていた場合、税務署側の心象が良くなると言われることもあります。
相続が発生する直前に被相続人の口座から引き出した現金
何らかの理由があり、相続が発生する直前、相続人が被相続人の預金口座から現金を引き出すことがあります。主な理由は、近い将来に発生するであろう葬儀費用の確保。被相続人が亡くなると、早々に預金口座が凍結されることもあるので、凍結される前に相続人が葬儀費用等を引き出す例はよくあります。ここで引き出した現金は、たとえ被相続人の葬儀費用に充てられたとしても、原則として全額が手元現金として相続財産の対象となるのでご注意ください。葬儀の前後、家族は睡眠時間を削るほど多忙になることもありますが、多忙であるがゆえに、ひと段落がつくと事前に葬儀費用を引き出していたことを忘れてしまうこともあります。引き出した現金を手元ではなく相続人の預金口座に入れていたとしても、被相続人の口座から引き出した現金は1円単位で相続財産です。
金貨や金地金
日本国が発行した金貨(天皇陛下即位記念金貨など)は、そのまま通貨として使用できる現金です。相続する際には額面通りの金額(1万円金貨なら1万円)として相続財産に含めなければなりません。
また、被相続人が保有していた金地金(金の延べ棒など)は手元現金ではありませんが、時価で評価の上、相続財産に形状する必要があります。
タンス預金があっても、必ずしも相続税がかかるわけではない
誤解のないよう補足的に説明しますが、自宅から被相続人のタンス預金が見つかったとしても、必ずしも相続税の納税義務が発生するわけではありません。
相続税は、相続財産の額が一定金額以上になった場合のみ発生する税金です。また、この一定金額は誰でも同じ金額というわけではなく、相続の状況により異なります。加えて、条件を満たせば相続税の軽減措置が適用されることもあるので、「高額なタンス預金が見つかった=相続税が発生する」というわけではないことを理解しておきましょう。
相続財産総額が一定金額以下なら相続税は発生しない
相続税には基礎控除額が設定されており、相続財産の総額が基礎控除額より低い場合には、相続税は発生しません。相続税の基礎控除額は次の計算式で算出します。
- 3000万円+(600万円×法定相続人の数)
たとえば法定相続人の数が1人の場合は、「3000万円+(600万円×1人)」で基礎控除額は3600万円です。タンス預金も含め、相続財産の総額が3600万円以下なら、相続税は発生しません。法定相続人が3人の場合は、「3000万円+(600万円×3人)」で基礎控除額は4800万円となります。
なお、相続税計算の基礎となる相続財産には、プラスの財産だけではなくマイナスの財産も含まれます。たとえば被相続人が評価額5000万円の遺産を持っていたとしても、借金が2000万円あれば、差し引き3000万円が相続税計算における相続財産とされます。
また、先に「相続が発生する直前に葬儀費用として引き出したお金は相続財産」と説明しましたが、相続税を計算する際には、実際に葬儀に要した実費をプラスの財産から差し引いて良いとされています。
配偶者の相続税額軽減措置が適用
被相続人の財産は、配偶者との協力のもとで蓄えたものとの考え方があるため、配偶者が相続する財産については相続税軽減措置が設けられています。
具体的には、配偶者の相続分が「1億6000万円以下」または「配偶者の法定相続分相当額以下」ならば、配偶者には相続税がかかりません。
たとえば、被相続人から相続する総額が1億5000万円ならば配偶者の相続税は非課税となりますが、仮に相続財産の総額が4億円で子供がいる場合、配偶者の法定相続分は2億円となるため、2億円までは配偶者の相続税が非課税となります。
配偶者の相続税軽減措置を利用するには税務署への申告が必要
配偶者の相続税軽減措置を受けるためには、税務署に申告する必要があります。「相続税軽減措置の範囲内だから自動的に非課税になる」と考えて申告しなかった場合、課税対象となるので十分にご注意ください。
相続税対策としてのタンス預金がバレたときのペナルティや相続税逃れのためのタンス預金と疑われないための注意点は下記ページにてまとめていますのでご参考ください。
相続税の申告方法
相続税の申告は、税務署への申告書類提出により行います。以下の3つの申告方法のうち、いずれか1つを選択して申告します。
税務署に申告書類を持参する
申告書類を作成の上、被相続人が亡くなったときの住所を管轄する税務署の窓口へ書類を提出します。
近隣に税務署があったとしても、必ずしも被相続人の住所を管轄しているとは限りません。事前に確認し、必ず管轄の税務署へ提出しましょう。
税務署に申告書類を郵送する
申告書類の提出は郵送でも受け付けています。
申告期限最終日の消印があれば期限内に書類を提出したとみなされますが、郵便ポストへ投函した場合には投函翌日の消印になることもあるため、期限ぎりぎりで郵送する場合には郵便局の窓口から郵送したほうが良いでしょう。
e-taxから税務署へ申告情報を送信する
令和元年10月1日から、相続税の申告書類をe-taxから提出できることになりました。
書類提出期限の最終日で夜遅い時間の場合、税務署や郵便局の窓口が開いていない可能性もあります。そのような場合の最終手段としてもe-taxが有効。期限最終日の夜12時までに申告が受理されれば、期限内に申告したとみなされます。
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合同会社PPS
「海外銀行口座開設」のプロフェッショナル
- 合同会社PPS
- 吉岩勇紀代表
2007年創業、これまで2,500人以上の海外銀行の口座開設をサポート。独自の人脈と豊富な知識で海外銀行とのコネクションを築く。現在はプライベートバンク(モナコ)・アクレダ銀行(カンボジア)・JDB銀行(ラオス)をはじめ、計8銀行の口座開設をサポートしている。