タックスヘイブンとオフショアの違いとは?
日本国内で事業を行うことに比べ、法人税や法人住民税等を大幅に削減できるとして注目されているタックスヘイブンやオフショア。当ページでは、タックスヘイブンやオフショア、オフショア金融センターなどの意味やメリット・デメリット、および日本におけるタックスヘイブン対策税制について詳しくご紹介します。
タックスヘイブンとオフショアの共通点と相違点
タックスヘイブン
タックスヘイブンとは、本国より法人税等が安い地域のこと(一般的な解釈)。日本を基準に考えれば、法人税率が概ね20%以下になる海外地域を指してタックスヘイブンと呼びます。法人税がゼロに近い地域などもあることから、タックスヘイブンを「租税回避地」と呼ぶこともあります。
海外に拠点を構えて営利活動を行っている企業は多々ありますが、海外での営利活動の目的は、もともと人件費削減や人材確保などでした。ところが時代が進むにつれ、日本よりも法人税等の安い地域に拠点を持つことで節税効果を狙う企業が増加。そのような企業が好んで進出した地域がタックスヘイブンです。
オフショア
オフショアとは、本国以外の場所で行われる取引一般のこと。日本で言えば、主に海外で会社を設立して営利活動を行うことなどを、オフショアと呼んでいます。
人材確保や人件費削減、仕入れコスト削減などを目的に、かねてからオフショアは広く見られていますが、いつの間にか徐々に「日本より法人税などが安い」という理由でオフショアを始める企業が増加。国内に入るべき税収が海外に落ちていくことが問題視され、現在では節税を目的とするオフショアに対して規制が行われています。
タックスヘイブンとオフショアの共通点
タックスヘイブンとオフショア対象地域は、ともに本国以外である点が共通しています。また、一般的には本国以外の場所に拠点を置いてビジネスを行う点でも同じです。
加えて、結果的に法人税節税などの視点が入ることも、タックスヘイブンとオフショアの共通点と言って良いでしょう。
タックスヘイブンとオフショアの相違点
タックスヘイブンは、本国よりも法人税率等が安い「地域」を言います。一方でオフショアは、本国以外に拠点を置いて行う「ビジネス」を言います。
本来、オフショアは節税のみを目的としたビジネスではありませんが、時代とともに節税を主たる目的とするオフショア企業が増加。この対象となった海外エリアのことをタックスヘイブンと理解します。
タックスヘイブンとオフショアの主な利用目的と利用方法
タックスヘイブンの利用目的と利用方法
タックスヘイブンの利用目的は、基本的に節税となります。また、タックスヘイブンとされる地域の目的は、税制優遇を通じた海外企業の誘致、および誘致から生まれる雇用や経済状況の活性化です。
タックスヘイブンの対象となる海外地域に法人を設立(移転)して事業を営むことで、企業は節税の恩恵を受けられる形となりますが、後述する通り、日本では平成30年4月から「タックスヘイブン対策税制」が施行されているため、タックスヘイブンに法人を設立する際には一定の条件を満たす必要が生じています。
オフショア金融センターの利用目的と利用方法
オフショア金融センターとは、非居住者に対して優遇的な制度を設けている市場地域のこと。本国以外で行われる取引一般をオフショアと言いますが、オフショア対象地域のうち、タックスヘイブンに該当する地域がオフショア金融センターと重なることもあります。
なお、「オフショア金融センター」という言葉は、特定の金融機関を指すものではなく、金融サービスの規制が緩い「地域」を指す言葉。その地域の一般的な金融市場とは別途で、非居住者に対して特別な金融サービスを提供している地域のことをオフショア金融センターと言います。
オフショア金融センターの具体例としては、英国バージン諸島やケイマン諸島、マルタ、バミューダ諸島、バハマ、モーリシャス、キプロスなど。広義では、ロンドンや香港、ニューヨーク、シンガポールなどもオフショア金融センターに該当します。
日本人がオフショア金融センターを利用するためには、日本のタックスヘイブン対策税制の条件を満たしたうえで、対象地域の法人を設立(移転)する必要があります。
タックスヘイブンとオフショア金融センターの共通点
日本においてタックスヘイブンやオフショア金融センターを語る場合、日本の法人税率等よりも優遇される市場地域を指すことが多い点が、タックスヘイブンとオフショア金融センターの共通点となります。
ただし、タックスヘイブンの定義はやや不明瞭であることから、厳密な意味での共通点には議論があります。
タックスヘイブンとオフショア金融センターの相違点
厳密に観察すれば、かならずしもオフショア金融センターがタックスヘイブンではないこともあります。
もとより、タックスヘイブンの定義は曖昧です。1981年、米国内国歳入庁はタックスヘイブンについて「タックスヘイブンのように見え、かつ、気にする者がそのように考えれば、そこはタックスヘイブンである」と説明しています。
タックスヘイブンとオフショアのメリット・デメリット
タックスヘイブンを利用するメリット・デメリット
日本国内で行う企業活動に比べ、節税効果が上がりやすい点が、タックスヘイブンを利用する主なメリットとなります。また、少なからず現地経済に貢献できる点もメリットと考えて良いでしょう。
一方、タックスヘイブンの利用は原則適法であるものの、グレーな要素が混在していることも事実。マネーロンダリングに利用されることもあることから社会的信頼の失墜につながりかねない点が、タックスヘイブンを利用するデメリットになるかもしれません。
タックスヘイブンにあたる国・地域、タックスヘイブンによる節税方法については下記ページでより詳しくまとめています。タックスヘイブンについて、より詳しく知りたい方は、下記ページもご参考ください。
オフショア金融センターを利用するメリット・デメリット
現地企業が受けられる金融サービスに比べ、圧倒的に有利な金融サービスを受けられる可能性があることが、オフショア金融センターを利用する大きなメリットになります。規制も緩い傾向があるため、機動力のある事業活動が期待できるでしょう。
一方で、海外を拠点にして事業を行う以上、言語や習慣、文化の違いが壁になる点は避けられないため、デメリットとなります。周到に準備を行ってプロジェクトを推進すべきでしょう。この点はタックスヘイブンにも共通するデメリットとなります。
日本におけるタックスヘイブン対策税制について
タックスヘイブン対策税制とは、簡単に言えば、タックスヘイブンを利用して節税の恩恵を受けている企業の税金逃れを禁止する制度です。
ただし、すべてのタックスヘイブン企業が対象となるわけではなく、主な対象は現地にペーパーカンパニーを設立した日本企業。日本企業と外国企業の取引において、ペーパーカンパニーと外国企業との間で取引を行った形式にすれば、本来なら日本で課税されるべき所得にタックスヘイブンの税制を適用させられます。そのような行為を禁止する目的で、タックスヘイブン対策税制が設けられました。
当制度の施行により、節税目的で設立されたタックスヘイブンのペーパーカンパニーは、ほぼ節税効果を得られなくなりました。一方、タックスヘイブンで真摯に事業活動を行う企業については、現地の租税負担が20%以上とならない限り、引き続きタックスヘイブンの優遇税制を適用できます。
一部の企業には痛手となりますが、制度としてはいたって合理的です。
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合同会社PPS
「海外銀行口座開設」のプロフェッショナル
- 合同会社PPS
- 吉岩勇紀代表
2007年創業、これまで2,500人以上の海外銀行の口座開設をサポート。独自の人脈と豊富な知識で海外銀行とのコネクションを築く。現在はプライベートバンク(モナコ)・アクレダ銀行(カンボジア)・JDB銀行(ラオス)をはじめ、計8銀行の口座開設をサポートしている。