海外口座所有者が死亡した場合の相続手続きはどうなる?
資産運用やその他目的で海外銀行口座に関心を持ち始めた時は、死亡時の海外口座に関するさまざまな手続きや注意点についても把握しておく必要があります。しかし、海外銀行口座に関する情報は少なく、個人でどのように調べればいいのかわかりにくいところです。
この記事では、死亡による海外口座の取り扱いや相続の可否、注意点についてわかりやすくご紹介します。これから海外銀行口座の利用を始めてみようか検討中の方などは、参考にしてみてください。
死亡した際に海外口座はどのように扱われるか
海外口座を保有している方(被相続人)が死亡した場合、海外銀行から預金明細書などの資料を送付してもらえるケースもあります。
また、即座に口座が凍結される訳ではないので、預金残高や口座の運用状況を確認したのち、口座の解約や相続手続きを含めた準備を進められます。
ただし、相続財産が外国にある場合、国際相続に該当する可能性も高く、より複雑な手続きになります。そのため、弁護士事務所や税理士法人などへ相談し、総合的にサポートしてもらうのが、一般的な対処方法といえます。
海外口座の相続は可能?
続いては、海外口座に残されている預金の相続について解説します。
被相続人が日本国籍なら可能
死亡した方が日本人の被相続人(海外口座の開設者)なら、国内の法律に沿って相続を進められます。
たとえば 、配偶者は常に相続人ですし、次いで第1順位の法定相続人は被相続人の子どもになります。また、第2順位の法定相続人は被相続人の親、第3順位は被相続人の兄弟姉妹です。
なお、海外口座に残されている預金を含めた財産を相続するには、法定相続人の相続財産に関する比率や内容を決める「遺産分割協議」を実施する必要があります。遺産分割協議を実施するには全ての法定相続人を集める必要があるため、戸籍謄本で法定相続人を確認しておきましょう。
被相続人が外国人の場合は本国の法律を適用
被相続人が外国人の場合、国籍の国で適用されている法律を基準に相続に関する手続きやその他ルールも定められます。
ただし、相続税に関しては、被相続人や相続人の国籍にかかわらず国内に在住しているかどうかによって変わります。
被相続人が国内に住んでいる時は、海外口座に残された財産も国内の法律に沿って原則課税対象となります。また、被相続人が海外に住んでいたとしても相続人は国内に住んでいれば、海外口座に含まれている財産も国内法に沿って課税される仕組みです。
死亡した方の海外口座を相続するために必要な書類
相続に必要な主な書類は、以下の通りです。
- 被相続人の死亡を証明するための書類
- 戸籍謄本
- パスポート
- 印鑑証明書
法定相続人が複数人存在する際は、前段でも触れたように遺産分割協議を実施し、協議内容を記録した遺産分割協議書を保管しておくのが大切です。また、遺言書が作成されている場合は、相続手続きの際に保管しておきましょう。
海外口座の相続手続きは国によって異なる
海外口座の財産に関する相続で特に注意すべきポイントが、相続手続きの方法や流れです。
海外口座の相続手続きは国によって異なる場合もあるため、事前に法律や手続きの流れを確認しておく必要があります。
それでは、海外口座の相続手続きに関する注意点を解説します。
英米法
英米法を基準とした法体系の国で海外口座を開設していた場合は、相続分割主義という考え方で相続財産や手続きなどが定められます。
相続手続きの流れは以下の通りです。
- 遺産管理人を指定
- 遺産管理人が相続予定の財産や相続人を確認
- 遺産管理人が相続税の申告・納付
- 1~3の工程を完了させたのち裁判所から相続財産の分配に関する許可が下りる
- 海外口座の預金を受け取る
主な特徴は、相続財産の種類によって法律の内容が変わるという点です。被相続人の所有していた財産が不動産の場合は、土地や建物のある国の法律に沿って相続税や手続きも定められます。一方、動産の場合は、被相続人の本国法(被相続人の国籍のある国で適用されている法律)を基準に定められる仕組みです。
主にアメリカやイギリス、オーストラリア、カナダなどは、英米法を基準としています。
海外口座の預金は動産なので、被相続人の本国法をベースに相続の準備を進める必要があります。なお、被相続人の国籍が日本であれば、国内の法律に沿って相続の手続きを進められます。
大陸法
大陸法は、現金や不動産、その他動産など財産の種類にかかわらず、被相続人の本国法を基準とした法体系を指しています。主にドイツやフランス、中国、韓国などは、大陸法を基準としています。
相続手続きの流れは以下の通りです。
- 海外口座を管理している銀行へ口座保有者の死亡や払い戻しに関する相談を行う
- 海外銀行ごとのルールに沿って必要書類を準備
- 公証役場で書類の認証を受ける
- 公証役場で認証を受けた書類を外務所へ提出、大使館を通じて証明を受ける
- 口座預金の払い戻し
そのため、海外口座の預金に関する相続手続きや課税の計算などは、被相続人の国籍のある国をベースに決められます。また、海外口座に預金が残っている場合は、銀行側と手続きや連絡を行い、相続手続きを進めていきます。
死亡した方の海外口座相続においてプロベートを確認
死亡した方の海外口座に残っている預金を相続する場合は、プロベートという仕組みについても把握しておくのが大切です。
それでは、プロベートの特徴についてわかりやすく解説していきます。
裁判所を通じて手続きを進める
プロベート(probate:遺言検認)は、遺言書の内容確認や実行、相続財産の分配といった相続に関するあらゆる手続きに裁判所も関わる形式を指しています。
つまり、プロベートの採用されている国に海外口座を所有している場合は、裁判所で相続手続きを進めなければいけません。
具体的には、相続人が裁判所へ検認(遺言書の有効性などに関する確認)を依頼し、遺産管理人へ財産を預けます。また、裁判所に任命された人物が、遺言書の有効性を確認したり相続人を指定したりしていく流れです。また、債務があれば、清算作業などを行います。
あとは、全ての手続きが完了したのち各相続人に財産が分配されます。
状況によってはプロベートが不要な場合も
プロベートを導入しているのは、英米法を取り入れている国です。そのため、英米法以外の法体系をベースにしている国や大陸法の国では、プロベートを行わずに海外口座の預金を相続人へ分配することが可能です。
海外口座の相続手続きにかかる費用は?
海外口座の相続手続きにかかる費用は、英米法と大陸法によって異なります。
英米法の国で相続手続きを進める際は、弁護士や税理士へサポートを受ける必要があります。そのため、着手金で50万円程度かかりますし、報酬金も含めると更に費用がかかる傾向です。その他、必要書類の郵送や切手代といった費用もかかるため、あらかじめ弁護士や税理士に合計の費用を確認しておくのが大切です。
大陸法に海外口座を開設していた場合は、海外銀行と直接預金の払い戻しに関するやり取りを進めることが可能です。弁護士へ相談せずに手続きを始めることも可能なので、100万円未満の費用相場といえます。
海外口座を保有している方が死亡した場合は相続手続きにかかる手間に注意!
海外口座を保有している(被相続人)方が死亡した場合、口座に残されている預金を払い戻し、相続することも可能です。また、適用される法律については、被相続人の国籍や所在地によって変わります。
これから海外銀行の口座を開設する方の中で相続にかかる負担も考慮したい方は、サポート会社へ相談し、相続手続きを含む負担も軽減しやすい銀行がないか調査してもらってみてはいかがでしょうか。
by
合同会社PPS
「海外銀行口座開設」のプロフェッショナル
- 合同会社PPS
- 吉岩勇紀代表
2007年創業、これまで2,500人以上の海外銀行の口座開設をサポート。独自の人脈と豊富な知識で海外銀行とのコネクションを築く。現在はプライベートバンク(モナコ)・アクレダ銀行(カンボジア)・JDB銀行(ラオス)をはじめ、計8銀行の口座開設をサポートしている。